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「……ひっ」
女たちに手渡され、赤子を腕の中に抱いた男はその顔を覗き込むと喉の奥を引き攣らせて目を逸らした。
その異様な様子に何事かと肩へ手をかけてきた者――身体を拭いてやっていた女だ――へと慌てて赤子を渡す。渡された女は首を傾げながらも哀れな赤子を安心させようと微笑みかけ、何かに射抜かれたように身体を硬直させて表情が凍った。声を上げて赤子を落とさなかっただけ、男より耐性があったのかもしれない。
見かねた他の者たちがどうしたのかと一斉に覗き込むと、息をのんだ。顔を逸らした者や、恐怖のあまり身体を震わせる者までいた。
既に泣き止み、愛らしい顔をして見つめてくる赤子の瞳。
右瞳は深く鋭い蒼色。
そして左瞳は、茜色をしていた。
しかし赤ん坊を受け取って抱き直したときには、漆黒の闇の色をしていた。どこかを見ているようでどこも見ていないような、不思議な色。
こんな瞳は、誰も見たことがなかった。
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