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所有物のくせに逃げるとは生意気だぞ、外貌は美人のクセに命令口調を発する彼女はすかさず追い駆けてくる。
なんだよあの人、メチャクチャ足が速いじゃないか! 運動神経なら俺も負けず劣らずな筈なんだけど、うわぁああ来ないでくださいぃいい! 悲鳴を上げて逃げ惑う俺は、向こうから歩いてくるフライト兄弟に気付く。
「空じゃん」
「何してるの?」
能天気におはようと手を上げてくる二人の間に割って入った俺は、そのまま挨拶もせずトンズラ。
クエッションマークを頭上に浮かべる二人だったけど、「そこを退け!」邪魔だと竹之内先輩に命令されて度肝を抜く。そそくさと廊下の隅に避難するフライト兄弟はポツリ。
「うはぁあ、朝から大変そうだな。空」
「ほんっと……、例の先輩に追い駆け回されてるよ」
同情している二人のことなんて露知らない俺は、その日の朝、チャイムが鳴るまで竹之内先輩から逃げ続けていた。
最初こそ諦めてくれると思っていたのに、いつまでも俺を追い駆け回してくれる彼女のド根性には感服するしかない。俺が教室に戻る頃には、根こそぎ体力を使い果たしてふらふら状態だったという。
朝がこれだったからこそ、昼休みが怖くて仕方が無い。
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