そうだ、あたし達の同人誌を作ろう!

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 「では夏コミとは?」「夏のコミックマーケットの略称だ」「ニュースで時折言っていますよね。それ」「うむ、日本が誇るイベントの一つなのだ。そこで本を売ろうと思ってな」「素人ができるんですか?」「同人誌を売る場なのだ。無論できるのだよ」「はあ」「そこであたし達を売り込むのだ!」「……は、はあ」  俺は先輩と何を会話しているのだろう?  取り敢えず簡略的に流れをまとめると、鈴理先輩は至らん思い付きで“俺達の小説”を自分達の手で作り上げようと思い立った。目的は攻め女ジャンル確立。俺達のような残念カップルを世に広めようと野心を燃やしている。こんなところかな? ……ろ、ろくな思い付きじゃない。  ズーンと落ち込む俺の心境などガン無視してくれる彼女は、早速プロットを立てようと大学ノートを広げる。 「あたしも空も小説を書いたことがないから、いきなり長編は無謀だと思ってな。ここは短編集を作ろう」 「せ、先輩。一人で話をすすめないで下さいよ。俺、置いてきぼりっす」 「R指定はさすがにまずいか。あたし達の年齢的に。だが空を喘がせたい。むぅ」 「……はぁあ。先輩、俺に拒否権はないんっすね」 「拒否権? あんたはあたしのもので所有物だぞ。拒否も何もない。あたしがするのだから空もする。これは決定事項なのだよ」  満面の(あくどい)笑顔を作るあたし様は友人の手を借りずに、俺達二人で小説を作る気満々らしい。     
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