そうだ、あたし達の同人誌を作ろう!

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「ナニナニ『僕、お花が好きなんです』『まあ可愛いお趣味ですわ』『お花畑を学校に作りたい。僕の夢です』『まあ可愛い夢ですわ』『先輩も手伝ってくれます?』『まあ可愛い子ですわ』『先輩が可愛いです』『まあ可愛いお口ですわ』『ならちゅーして下さい』『まあ可愛いおねだりですわ』……空くん、文才のセンスもなければ萌えも何もない。何より僕が酷い! 誰この子! この頭がクラゲな子は誰?! 君は僕が嫌いかい?!」 「え、え?! う、うぶで可愛くない? 俺なりに可愛くしたんだけど! ザ・メルヘンチック!」 「ただの馬鹿で夢見がちのクソ男じゃんか! リバースものだよ!」  酷評をちょうだいしてしまった。俺なりに可愛い攻め女と受け男だったのに!  「えー不満?」俺は大学ノートに書いた文を眺める。なかなかな出来だと思うんだけど。襲われることもなければ、えっちいお話もない。鈴理先輩の攻め女と受け男に沿った健全かつ学生らしい小説だと俺は思うね!  大学ノートが鈴理先輩の手に戻っていく。  「まずは攻め女と受け男を代表するあたし達を書こう」彼女は練習がてらの下書きとして、思いつく文を乱雑に羅列していく。  紙面を覗き込む。そこには“空が乙女のように赤面して鈴理を一瞥した”と書かれていた。  片眉をつり上げ、ノートを取り上げると語尾に付け足す。“するとそこには、負けじと乙女のように赤面している鈴理がいたのである”。顔を引き攣らせた鈴理先輩がノートを分捕り、文を続ける。“彼女は照れていたわけではなく、夕陽によって顔が赤くなっていただけである”。俺も同じ行為をして文を書き足す。“彼は発熱していただけである”。     
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