その王子、危険につき、悪い子につき

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「うん。僕は君の声が欲しい。良いと言うまで喋っちゃ駄目だよ。声は僕の物だから」 「分かりました……あ、」  こうして声を取られてしまった俺は動作で返事することを努め、よせばいいのに第二ゲームを始めた。弁解すれば心のどこかで勝ちたい気持ちがあったのだと思う。勝てば、あの羞恥心まみれた俺の画像を消せる。淡い期待を寄せていた。  ツーペアができた。今度は勝てるだろう。にやにやっとしながら、カードを見せれば、スリーカードが返された。嘘だろ。 「ふふ、また僕の勝ちだ。次は君の左手が欲しい」  今度は左手を使っちゃいけないのか。  安易なことを思っていると、「左手は使ってもいいよ」ただし、これは僕のだと王子は妖艶に綻ぶ。はて、左手は使ってはいいけれど、僕の物宣言された俺の左手。一体どうしろと。  御堂先輩が近寄ってきた。  おもむろに左手を持つと、「綺麗な指だね」人差し指を銜えてしまう。  飛び上がる俺が口を開けば、彼女の長い指が唇を押し当てた。喋るなという合図。顔を紅潮させる俺に目で笑い、丹念に五本の指を舐めていく。舌を這う生温かい感触、当たる歯に吐息、見ていられなくなって目を背けてしまった。     
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