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「は、ぁ」気付けば、小さな吐息が零れた。焦らすように唇が鎖骨に下りた。弾力あるそれが肌に触れると体が微動する。
「ここ、感じるの?」
そっと吸われる鎖骨の窪みに舌を這わせ、彼女が顔を覗き込んでくる。
肯定も否定もしない。感触に感じたのは本当だ。けれど性的に感じたかといえば、よく分からない。性感帯ではなさそうだけど。
「真っ赤だ」髪を愛撫するように触り、「もっと触りたい」王子は男のように、「君の感じる顔を見たい」恥じらいもなく艶のある言葉を送る。
「嫌なら、嫌と言って。今なら止めてあげるから」
彼女はうそつきだ。
そのつもりがないから、声を最初に取ったんだ。そしてルールに則って声を出さない俺も俺だ。大概で馬鹿野郎だよ。
賭け事で取られてしまった左手に目を向け、その手を彼女の後頭部に回した。さらさらの癖っ毛を撫ぜることで、御堂先輩は答えを見出したのだろう。唇を人の耳元に寄せた。
「この勝負も僕の勝ちだね」
最初から俺に勝ちを与えないつもりだったくせに。
そうだよ。俺の負けだよ。ゲームに乗った時点で俺の負けだったんだ。途中から自分の負けは見えていた。それでも俺は勝負に乗ってしまった。
こうして俺と彼女は常にゲームをしている。
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