その王子、危険につき、悪い子につき

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 トランプゲームのように、いつも駆け引きをしている。いつか、俺は王子に魅了され、本当の意味で落ちてしまいそうだ。いや、もう、落ちているのかもしれない。でなければ、俺は敢えて負ける選択を取るわけがない。  たったった、廊下からリズミカルな足音が聞こえる。  女中の誰かの足音。さと子ちゃんだろうか。障子に目を向けると、御堂先輩が膝立ちとなり、宙に浮いている紐を引っ張って明かりを落としてしまった。  トランプカードが散らばっている一室、闇とまではいかないものの、間接照明のせいで薄暗いオレンジが部屋を満たす。  瞠目する間もなく、勢いづいた王子が人の肩を掴んで俺を畳に押し倒した。  痛みで上がる予定だった小さな悲鳴は彼女の口内に消え、繰り返される軽い口づけはとどまることを知らない。  仄かな影法師が障子の向こうに浮かぶ。  夜更けの刻だから就寝しろ、と誰かが言いに来たのだろう。障子に浮かぶ影法師が部屋の前で立ち止まっている。  和紙を張った一枚壁の向こうに人がいる。  それにも関わらず御堂先輩は俺の下唇を吸い、上唇を舐め、そろそろーっと舌で唇をノックしてくる。堪えられなくなり、静かに唇を開閉すれば、無遠慮に舌が入ってくる。  迷うことなく俺の舌と戯れるために、深くなる口づけ。声が漏れそうになる。     
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