ひとつの甘さのなかで

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「センッパイ!」  なんの嫌がらせっすか! 人の腰をお触りするなんてっ。  声音を張ると、「これも癒しになるんだ」とかほざいたよ! さと子ちゃんの前でなに言ってるのこの人くさ!    クスクスと笑声を零すさと子ちゃんの笑顔にも癒されたのか、やーっと御堂先輩が機嫌をなおしてくれた。  寝返りを打ち、一緒に羊羹を食べようとさと子ちゃんを誘っていたのだから。  「あ、その前に」浴衣に着替えよう。ポンッと手を叩き、その場で学ランの上衣を脱ぐためボタンを外しにかかる。俺とさと子ちゃんが驚き返ったのは言うまでもない。 「ちょ、ちょっと待った! なにしてるんっすか!」 「勿論着替えだぞ? あ、さと子。向こうの箪笥から浴衣を取ってくれないか」  「は、はい!」慌てて腰を上げるさと子ちゃん。  俺も腰を上げたいけど、王子が膝に乗っかっているから動けねぇ! だから全力でタンマをかける。   「先輩! 十秒ストップ! 俺の上から退いて下さい!」 「豊福。ストップを掛けた後に退いてと言われても、僕は十秒間、動けないぞ?」 「俺がいる前で着替えないで下さいよ! 俺は男なんっすよ! 異性の前で堂々と着替えるなんてっ、マナー違反っす!」     
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