ひとつの甘さのなかで

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 へーん、いいさ! 向こうは女子トークを楽しんでいるんだから。  へーんだ。さっさと着替えてくれない俺を苛めてるんっすかね? 上等っすよ! せいぜい苛めて下さいな! 俺が拗ねるだけっすから!    「本当におっきいですね」「そうか?」「だってほら谷間が。開襟タイプのお洋服とか着ないんですか?」「普段は学ラン着ているしな」「勿体無いですよ!」「うーん」    まーだ着替えを終わらせてくれない。  それどころかヒートアップさせている。嗚呼、さと子ちゃんは俺の味方だと思っていたのに! ……むっちゃ実家に帰りたくなった。今こそ実家に帰らせて頂きますを使っても良いんじゃないか?  さと子ちゃんはともかく、御堂先輩は確実にわざとトークを広げているだろう。  その意地悪に気付いた俺はますます機嫌を損ねてしまう。比例して羊羹もむしゃむしゃ。自分の分をあっという間に平らげてしまった。  やることがなくなったからその場にごろんの不貞寝。ガキくさい? 器も小さい? どうとでも言うが良い。俺の器はミニマムでまんまガキなんだよ!      「豊福」       ようやく声を掛けられた。  片目を開けて、「着替えたっすか?」袂は閉めてますよね? じゃなかったら怒る、と不機嫌に返す。     
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