某俺様、萌えに想いを(前編)

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 真摯に謝罪する俺達にフンッと鼻を鳴らし、川島先輩は胸倉から手を放す。  あー苦しかった。  まさか川島先輩からこんなことをされるなんて思わなかった。萌えを説法されると思わなかった。此処まで真剣に熱く話すということは、川島先輩も実は宇津木ワールドの住人だろうか?  疑問に持ったので相手に投げ掛けてみる。  すると川島先輩は、腐女子ではないと即答。  宇津木先輩が好きだから、よく付き合うだけで自ずからは歩まない世界だとか。そういう世界を否定するつもりはないらしい。攻め女を認めるのと同じだと語る川島先輩、「良い友を持った」鈴理先輩は柔和に綻んでいる。  微笑ましい光景な筈なんだけど、何故か素直に喜べないのは攻め女小説の世界を俺が知っているせいだからか?  言葉のやり取りではちっとも雰囲気が出ないと考えた川島先輩は、「くっ付きあってみたらいいかも」とケッタイなことを言い出した。  これまた無茶苦茶なことを。顔面硬直する俺等を立たせる川島先輩は、抱擁し合うようご命令を下した。  これは受けも攻めもなく、どちらから抱きついてもいいから、とにかくくっ付いて欲しいと指示。そんなことを急に言われてできる俺達じゃないから、横目で視線をかち合わせて、終始ダンマリになる。       
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