某俺様、萌えに想いを(後編)

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 背後から見守っている鈴理先輩や川島先輩の視線を一身に浴びつつ、俺と大雅先輩は靴を履き替えている宇津木先輩の真横を通り過ぎた。  「あら」珍しい組み合わせですね、声を掛けられて俺達は立ち止まる。しめた、彼女から歩んでくれた。    声音からしてまだ落ち込んでいるようだけど、目は完全に興味津々。  これは初っ端からきたんじゃ……、俺達は彼女に挨拶して一笑する。   「さっきそこでバッタリ会ったんっす。と言っても、俺が待ち伏せをしていたんっすけどね。昨日、俺、大雅先輩にハンバーガーを奢ってもらったんでそのお礼を言おうと思って」 「まあ、大雅さんが?」 「昨日、豊福と話すことがあってさ。駄弁る場所が欲しくてファーストフード店に行ったんだ。ったく、金がねぇのなんだの気にするんだぜ? そんくれぇ奢ってやるっつってるのに、気にしやがって」 「だって悪いじゃないっすか。後輩として気にするっすよ」    「バーカ」テメェだから奢ったんだよ、グシャリと頭を撫でてくる大雅先輩は、ちっちゃなことで一々気にするなと言って歩き出す。  「あ、ちょっと」待って下さいよ、俺は宇津木先輩に会釈して彼の後を追う。  そのまま階段に差し掛かった俺達は、和気藹々と昨日のことを駄弁る。否、駄弁る振りをして背に受ける熱い視線を感じ取っていた。     
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