18人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
兄貴は「林檎の赤さは夕陽を真似していると思うんです」と意見し、百合子は「いえいえ。林檎も生き物ですから感情があるんだと思うんです。照れてるんですよ」と意見。
お互いになるほどと頷きつつも、「青林檎は何を真似しているんでしょうね?」と疑問を抱き、「照れる以外の時は何色をするんでしょう?」と疑問を抱く。
まったくもって話が噛み合わない二人は、こうして延々とズレにズレながら会話を続ける。
誰かが止めに入らないとこの不思議談笑は終わらないってわけだ。
「そんなあいつ等が喧嘩なんて想像もつかねぇよ。寧ろ、何が原因で喧嘩できるのか、俺に教えて欲しいくらいだ」
「確かにあんたのところのお兄さんも電波だなぁ。お人好しの電波というか」
幼馴染みの鈴理先輩が微苦笑を零した。
彼女は大雅先輩の許婚だから、何度も会ったことがあるんだろう。俺も一度だけお会いしたことがあるけど、電波な面はまだ見たことがない。スッゲェおドジさんだってことだけは知っているけど。性格的に弟と全然似てないんだよな、あの人。
「喧嘩じゃないか」
だったら原因はなんだろう。
うーんっと考える川島先輩は、飽和状態のグラスを手に取ってお冷を胃に流し込む。考えても結論が出なかったらしい。本人に聞くしかないと降参ポーズを取った。
「だがなぁ、百合子自身が話してくれないことには安易に聞くのもなんだと思うんだ」
最初のコメントを投稿しよう!