ぬくもり欲しな彼氏

4/22

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
 既に起床しているみたいだけど、俺はまだ眠い。横顔を盗み見て瞼を下ろす。ベッドを媒体に彼女とぬくもりを共有できている。それが俺にとって酷く安心できる安定剤みたいなものだった。    襲ってくる眠気に身を任せていると、ぬくもりが消えた。  弾かれたように俺は手を伸ばしてそれを捕まえる。しっかり寝巻きを握り締めると、「おはよう」先輩が顔を覗き込んで挨拶をしてきてくれた。 「……はよっす」  蚊の鳴くような声で挨拶してしまう。情けない。  でもまだ先輩には行って欲しくないから、寝巻きを引いた。  図で表すと、保育園に子供を預けようとしたお母さんに息子が「お母さん行かないで」と駄々捏ねているみたいな光景だと思う。いやマジな話、行って欲しくない。何処にも行って欲しくないんだ。 「空。起きないのか?」  笑声を含む声に、「体が重いっス」だから起きられないと俺。  勿論言い訳だって鈴理先輩は見抜いているんだろう。 「今日も学校だ」  遅れて学校には行くつもりだが、着替えなければいけないだろ?  空はまだ寝てていいから、優しいお言葉を頂戴したけど、そういう問題じゃないんだ。起きたくないし、先輩には此処にいて欲しいんだ。  間を置かず、「しょーがない奴だな」先輩が布団に戻ってくれた。  寝転んで、「空の髪でも堪能するか」本当はエッチしたいんだぞ、と攻め女らしい言葉を吐いて頭を撫でてくる。髪を弄ってくる。     
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加