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既に起床しているみたいだけど、俺はまだ眠い。横顔を盗み見て瞼を下ろす。ベッドを媒体に彼女とぬくもりを共有できている。それが俺にとって酷く安心できる安定剤みたいなものだった。
襲ってくる眠気に身を任せていると、ぬくもりが消えた。
弾かれたように俺は手を伸ばしてそれを捕まえる。しっかり寝巻きを握り締めると、「おはよう」先輩が顔を覗き込んで挨拶をしてきてくれた。
「……はよっす」
蚊の鳴くような声で挨拶してしまう。情けない。
でもまだ先輩には行って欲しくないから、寝巻きを引いた。
図で表すと、保育園に子供を預けようとしたお母さんに息子が「お母さん行かないで」と駄々捏ねているみたいな光景だと思う。いやマジな話、行って欲しくない。何処にも行って欲しくないんだ。
「空。起きないのか?」
笑声を含む声に、「体が重いっス」だから起きられないと俺。
勿論言い訳だって鈴理先輩は見抜いているんだろう。
「今日も学校だ」
遅れて学校には行くつもりだが、着替えなければいけないだろ?
空はまだ寝てていいから、優しいお言葉を頂戴したけど、そういう問題じゃないんだ。起きたくないし、先輩には此処にいて欲しいんだ。
間を置かず、「しょーがない奴だな」先輩が布団に戻ってくれた。
寝転んで、「空の髪でも堪能するか」本当はエッチしたいんだぞ、と攻め女らしい言葉を吐いて頭を撫でてくる。髪を弄ってくる。
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