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心底安堵した。先輩のぬくもりが欲しくて、自分から体を密着させる。
同時並行にぬくもりが記憶を刺激した。
思い出すのは実親の最期。目前で車に撥ね飛ばされた光景は文字通り悲惨の一言に尽きる。
俺が、両親の、命を奪った。
それは変えようのない事実だ。
どうしようもなくヘタレている俺は、思い出した記憶に涙腺を緩ませてしまう。
小声で謝罪、それは命を奪った両親に対してなのか。それとも世話を焼いてくれている目前の鈴理先輩に対してなのか。
もう出し尽くしたと思ったのに零れてくる涙が自己嫌悪へと誘(いざな)う。
俺ってどうしょうもないや、ほんと。
「空」
体を震わせていたら、閉じていた瞼にキスされた。
驚いて瞼を持ち上げると、「ダイジョーブ」大丈夫だから、優しい言葉を掛けてくれる先輩がそこにはいた。撫でる手が抱擁する手に変わる。枕に身を預け、目尻を下げる彼女は俺を引き寄せて頭を抱いてくれる。髪を梳いてくれる手がやけに心地良かった。
「先輩、何処にも行かないで下さいっす。ひとりにして欲しくないっす」
気付けば本音が漏れていた。
弱い心を剥き出すのに勇気はいる。
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