ぬくもり欲しな彼氏

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「怖いなら、あたしがこうして手を握っておく。行こうか、空」    俺のやりたいことを察した先輩が目尻を和らげた。  知らず知らずに汗ばむ手を優しく握ってくれる手に、俺はぎこちなく笑みを零す。縫い付けられたように立ちすくむ足を動かしては止める。その度に先輩が手を引っ張ってくれた。  まるでエスコートされているようで、自分のヘタレ具合に苦笑してしまう。  だからこそ自分を奮い立たせて窓辺に向かった。  もう一度景色を見るために。先輩と外の景色を見るために。  大丈夫、先輩が一緒なんだ。  高所恐怖症が俺を恐怖で支配してもきっと大丈夫、ダイジョーブ。    あ、そうだ。  窓の景色を見られたら、先輩に何かしてもらおう。自分から望んでやっていることとは言え、何かご褒美がないと気も持たない。思ったことを先輩に提案すると、「今日の空は我が儘だな」あたしに我が儘を言うとはいい度胸だ。食ってしまうぞ。と、スンバラシイ脅し文句を下さった。怖っ!  いいじゃないですか。俺、我が儘言う人って限られているんですから。  脹れ面で言えば、「何をして欲しい?」セックスなら即受け入れてやるぞ、と彼女。  うーん、そうだな。     
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