草食、逆転を狙ってみる。

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 俺達は逆転カップルだ。カレカノの立ち位置が逆転している。とはいえ、性別は変わらない。俺は男で彼女は女だ。……やっぱり男なんだから、それなりの行動は示したほうがいいのかなぁ。鈴理先輩がそれを望んでいるとは思えないけど、でも、あまりにも消極的過ぎると溜息をつかれることがある。  普通に考えて、好意を寄せている相手に好意を返されたら嬉しいもんな。  俺だって例外じゃない。攻め攻めな彼女に振り回されてはいるけれど、やっぱり向けられる好意は嬉しいもん。……たまには肉食くんになってみるのも手か?   「キス、強引に奪ってみるか。男として」    脳内で結論を出し、握り拳を作った。が、本当にそんなことができるのかとヘタレてしまったのはこの直後。  そうだった。自分で認めるのも虚しいけど、俺ってヘタレの意気地なし受け身草食くんだったよ。肉食ガンガンいくぜ攻め女の彼女の唇を奪えるのかなぁ、ほんっと。           □      「―――…うむ、それでこのケータイ小説では王子と呼ばれた生徒会長に求愛されるのだが。……ん? 聞いているのか、空」 「え、あ……勿論聞いてますよ」      昼休み。  2年F組に遊びに来ていた俺は、ケータイ小説を熱弁していた彼女の問いにへらっと誤魔化し笑いを浮かべた。  簡単に嘘だと見破る鈴理先輩はぶすくれた表情を作って、「あたしの話を聞かないとは何事だ」とお叱りの言葉を飛ばしてくる。申し訳ないと思いつつ、俺はひとりでガッチガチにテンパっていた。     
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