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計画を企てた途端、これである。相手を必要以上に意識してしまい、頭上に自分の感情を具体化した黒い糸がもじゃもじゃと絡んでしまった。
あーくそっ、意識するなするなするな! キスを奪うのはもっと人気のないっ、放課後の時間を狙ってだな。
「空、まーたあたしの話を聞いていないな?」
と、お小言を飛ばしていた彼女が一層咎めの声を強くした。
おどろおどろしいオーラを発してくるあたし様に、俺は悲鳴を上げそうになる。やっべ、彼女を怒らせた! きっとあたしが傍らにいるのに、上の空とはどういうことだ! 調教してやろうか! とでも思っているのだろう。目が据わっている。
怖ぇーよ先輩! 下手したら此処で仕置きしてきそうだよ!
(いや、この危機はもはやチャンス! やるっきゃない! いけ俺、少しはヘタレを返上しろ!)
多大な勇気を抱き俺は、周囲をきょろきょろと見渡して比較的に人がいないことを確認。
今がチャンスだと椅子から腰を浮かして、お怒りの彼女に手を伸ばした。
反射神経のいい彼女が俺の腕を掴まなかったら、チャンスは活かされていたのだろう。けれど、ガッチリ腕を掴んでくるもんだから俺はしっかりと硬直。教科書にはない、新たな場面に千行の汗を流す羽目になった。
「空?」何をしているのだ? 意表を突かれた鈴理先輩が間の抜けた顔を作ってくる。
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