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臨機応変な対応を取れない、融通の利かない俺はテンパりにテンパって、あらかじめ用意していた台詞をぽろっと零してしまった。
「せん、ぱい。可愛い、から、キスっ、」
この噛み具合、最高に最悪だ。格好悪いにも程がある。
本当は『可愛いからキスをしたくなった』と言いたかったのに!
羞恥のあまりに耳まで熱帯びてしまう。対照的に真ん丸おめめを作った彼女は、ほぼ無自覚に「キスしたかったのか?」と問い掛けてきた。
何度も首肯する。
「お、れだって、先輩の、こと好きで」
嗚呼もう、いっそ殺してくれ。
計画に失敗した俺は今、世界中の誰よりも恥ずかしい思いをしている!
半べそを掻きたいような気分に駆られていると、逸らしていた顔を強引に戻され、近付いてきた唇に言葉を塞がれる。
不意打ちのキスに目を点にしてしまう俺を余所に、両頬を包んでくるあたし様がふっと笑みを零した。
「空があんまりにも可愛いからキスしたくなった」
―――…どこまでいっても俺達は逆転カップルなんだと思い知った瞬間。
しごく受け身な俺と、しごく攻め身なあたし様じゃあ、結局逆転の逆転、つまり普通のカップル論には当てはまれないんだ。
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