草食、逆転を狙ってみる。

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 幸せそうに笑って抱き締めてくれる彼女にへにゃっと笑い返し、「俺は貴方の物だからキスして欲しくなったんです」と告げる。「そうだな」あんたはあたしの物だ。首に柔らかな唇を押し付けてくる所有主。吸引された痛みすら愛おしいと思った。    ここで留まってくれたなら俺達はいい空気で終わったのだろうけれど、遺憾なことにお相手はあたし様。これで終わるわけがない。    何を思い立ったのか、鈴理先輩が腕を解いて強引に俺を肩に抱えた。  ギョッと驚く俺を余所に、彼女は早足で教室を出た。かんなりヤーな予感を抱く俺は降ろして欲しいと乞うのも忘れ、「何処へ?」と恐々質問する。まったく答えようとしないあたし様は、ご自慢の綺麗な茶髪を揺らし、足先を階段に向けた。  おもむろに階段をのぼり始める。  一定の速度でのぼる階段の先に見えたのは、行き止まりの光景。屋上に続く階段まで足を伸ばしたのだけれど、残念なことに一般生徒では学校の屋上には踏み込めない。否、生徒では屋上に入ることすら不可能だろう。  最上階までのぼり詰め、あたし様は踊り場で足を止める。落とすように俺の体を床に放ったもんだから、受け身を取れず、尻餅をついてしまった。 「イッ、タタタ。先輩、何するんっすか。もっと優し、くっ」  人の膝の上に乗ってくる彼女が妖艶に綻んだ。  すかさず脳内でシチュエーションを考えてみる。     
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