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1章 初恋
案外に最初は呆気なく来た。
たった微々たる行為で、私の心臓は締め付けられるように高鳴った。
頬が染まったのを実感して、目のやり場に困った私はあなたの右手くすり指にある指輪に目を落とした。
「(嗚呼…)」
―――
――
―
ジリリリリリリッ ジリリリリリリッ ジリリリ
目的物が見当たらない私の右腕は、少しだけ左右に迷子になった後にそれを止めた。目がまともに追いついてくれないなかで、それは刻々と時を刻んだ。私は、頭がボーっと思考停止させているなかで今日が新学期であることに気付く。
「そっか、もう誠さん卒業しちゃったんだ」
ぼんやり独りで呟くと何故だか布団から身体を出す行為に成功した。
春先でもまだ朝方はひんやりとする。足の指先がひんやりとしたフローリングに触れるたびに私は床に熱を取られていく気がした。
起きたら洗顔をして、朝食をとって、歯磨きをする。服に着替えたら薄めに化粧をして、少しばかり髪の毛を巻く。人並みの朝のルーティーンを済ませた私は、若干サイズの小さいパンプスを履いて大学に向かった。
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