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勢いで言ってしまったあまりに、誠さんも少し驚いた顔をしていた。
私は一瞬で我に返り、「っと、私は思いますけどね」と最後に無理やり言葉を付け足した。
「そっか、そうだね。じゃあいまのは前言撤回」
と、誠さんはぽつり、と言葉を吐き捨てて手を振って反対方向にある最寄駅に向かった。前言撤回なんて言う誠さんが少しだけ寂しそうに見えて、私は淡い恋心が更に染色されていく気分になった。
「前言撤回、かあ…」
自分の自暴自棄が私の幸せを少しだけ壊したと思って悲しみながら歩いていると、初めて誠さんに出会った曲がり角の自動販売機が見えた。カチャ、と小銭を落として緑茶を買うと私はバッグに詰め込みながら曲がり角を曲がった。
と。
ドン!!!
反対側から勢いよく飛び出してきた男性に跳ね返されるように飛ばされ、少しきつめのパンプスが助長して私は勢いよく尻もちをついた。
「(うわ漫画じゃあるまいし、私なかなかに恥ずかしい…)」
「悪い、平気?」
そう差し出された手で過去の記憶が蘇ったような気がした。
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