1章  初恋

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半年前。 夜も静まった深夜2時頃、私は近くにあるスーパーで買い忘れたお茶を買いに自動販売機まで来た。コンビニは大学のすぐ近くまで行かないとないし、お茶くらいだからと多少の妥協。 「え、お茶売り切れてるじゃん…」 緑茶、麦茶どちらにしても売り切れの表示があった。 「いや、売り切れるほど買うやついるのかよ」 と、独白すると後ろからくすり、と人が笑みを零す音が聞こえた。 「それ、僕のことかな」 そう言われて後ろに目を向けると、その男は自販機に飾られているパッケージと同じ緑茶を片手に持っていた。自然に「あ、」と私は声を出してしまった。 「最後だったんだ、これ」 「なるほど」 「いる?」 「いえ」 何なの、このひと。 何でこんなふわふわしてんの。 「君、日明のひと?」 そう男に聞かれると、私は首を縦に振った。
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