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「なんだよ、急に。危ないって」
「ご、ごめん。傘が見えたから。気に入っていたの、これ」
この傘を乗せた電車が終点で折り返して来たにしては早いけど、確かに私の傘だった。
どこかで誰かの手によってここまで来たのだろうか?
「マジかよ。ガラガラだな」
俊太が眉をひそめて座席に座ったから、私も隣に座った。
同じ車両には人が2~3人しかいなかった。普段なら絶対に、平日のこの時間にそんなことは有り得ないのだけど……。
「回送電車なのに間違えて乗っちゃったわけじゃないよね?」
私は不安になって見回したけど、乗っている数名の人は落ち着いている様子だった。
「ま、とにかく次の駅で降りてUターンしようぜ」
いつものその笑顔を見て、俊太と2人でいると不安も半減していることに気が付く。
さっきの返事はいつするのが自然なんだろう……。
スルーした形になってしまって、もうタイミングを逃している。
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