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あの時、霧町駅で傘を持って電車を降りた。
そう言えば、今日は俊太がレギュラーの発表があると言っていた。その結果が聞きたくて、俊太にlineして反対側のホームへ移って待つことにした。
反対側のホームへ行くと、夕方から酔っぱらった人が大きな体でフラフラとホームの端っこを歩いていた。
私が「危ないですよ」と声を掛けると、その酔っ払いが私をいきなり突き飛ばして……走りこんで来る電車の轟音が頭に響き、ライトが視界を奪うほど眩しかった。恐怖心や痛覚を刺激される前に……意識が飛んだ…………。
そして、気が付いたら駅で俊太が来るのを待つためにlineをしていた。
きっと、私の中で心残りだったんだ。
俊太の方を見ると、震えながら涙目で私を見ていた。
「俊ちゃん、スタメンおめでとう。私、全部の試合を見ているから、だから負けないでね」
もう一度抱きしめられた。肩が濡れていくのが分かる。
開いた扉の向こうは光でいっぱいだった。
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