エピローグ

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 しっかりと抱きしめていたはずなのに、いつの間にか俺の腕の中から抜け出して、千秋が吸い込まれるように扉の向こうの光の中へ入って行った。  俺を振り向いた千秋は笑顔で、そこには寂しさや哀しさは見えず、優しさが前面に出た綺麗な表情だった。  一瞬見惚れてしまって、目の前で扉が閉まった。  と同時に、目の前には人が溢れかえっているホームの風景が広がっていた。俺が乗っていた電車が霧町駅を去って行く。  俺は通って行く人とぶつかりながら、スマホを出してlineを確認した。   『電車の中に傘を置いて来ちゃったの。俊ちゃん、持っている?』 『相変わらずアホだな千秋は。ベンチで待ってろ』  最後に送り合ったメッセージが残っている。  だけど、その5分前には千秋の7つ年下の弟の春樹からlineがあった。 『今、警察から連絡があって、姉ちゃんが霧町駅で電車に撥ねられたらしい』  その時、俺の乗っていた電車は人身事故の影響で止まるとアナウンスされていた……。
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