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「十和さん、うなされてたよ? 怖い夢でも見た?」
赤坂くんに揺り起こされて、私はゆっくりと施術台から起き上がった。
「どうかな。私って夢をまったく覚えていられないから」
「それでいい。辛い過去の記憶を何度も夢で再生することによって、徐々に忘れ去っているんだ」
「今日の施術は終わり? 私、何だかピザを食べたい気分」
「そう? 僕は十和さんを食べたい気分」
私を施術台に押し倒すと、甘く微笑む赤坂くんの手が私の首を撫でた。
「あ。今、何かちょっと思い出したような……」
何か怖いこと。
でも、すぐに記憶は霞んでしまう。
ピタッと手を止めた赤坂くんが、探るように私を見つめる。
「大丈夫。怖い夢を見たら、また僕が消してあげるよ」
END
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