記憶鮮明

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先にお風呂を使わせてもらって、赤坂くんの部屋着を貸してもらった。 ブカブカだけど、赤坂くんの匂いに包まれているのが嬉しい。 それから私は、ここ最近起こったことを彼に全部話した。 宮島さんの婚約者が店に来て、私がただの浮気相手だったと知ったこと。宮島さんとの関係はそのまま消滅したこと。 無言電話が掛かってくるようになって、店を辞めざるを得なくなったこと。 そして今日、宮島さんが怪文書のせいでクビになったと自宅に怒鳴り込んで来たこと。 「宮島先輩が京美さんと婚約したことは知っていたんだ。だから十和さんに会ったとき、また先輩の悪い癖が出たんだとすぐにわかった。あの人の浮気癖で、大学時代から京美さんは苦労していたから」 だから、店に来たときも京美さんは冷静だったんだ。自分の父親にも浮気のことを黙っていて。そこまで宮島さんを愛しているのか。 「十和さんが先輩と別れられて良かった。先輩との縁を切るためには店も辞めて良かったんだよ。アパートも引き払ってここに来た方がいい」 「でも、こんな都心のマンション、高くて家賃払えない」 「家賃なんかいらないから、ここに住んで。じゃないと僕が心配でおかしくなる」 赤坂くんの瞳に狂おしいほどの思いが揺らめく。 「どうして、そこまで私によくしてくれるの?」 「……十和さんを愛してるから。一目惚れなんだ」
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