126人が本棚に入れています
本棚に追加
「十和さん、大丈夫だよ。嫌な夢を見ただけだ」
夢の中で赤坂くんが優しく囁いたのを覚えている。
嘘つき。あなたの方が夢のくせに。
夢の世界はあんなに安らかで甘美なのに、現実はどうしてこんなに辛いんだろう。
店長と翠ちゃんは宮島さんの悪口を言っては、私を慰めてくれた。
それなのに、私は2人に迷惑をかけている。
さっきから店の電話が鳴りやまない。
出ると、すぐに切られる。そして、すぐにまた掛かってくる。
「あの京美っていう女の嫌がらせですよ、きっと」
翠ちゃんが棚卸をしている店長に話しかけた。その言葉を遮るように、また電話が鳴り出す。
そんなことが続けば、お客様が不審に思うのも当然だ。客足がめっきり減ってしまった。
耐えられなくなって私が店を辞めたのは、京美さんの思う壺だったかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!