5. 満月

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「金曜日かぁ」 今週末の天気予報はどうだっただろう。洗濯物がたまっているからどうにかしないとな。あと、シンクの食器も。ゴミもまとめて… 平日にこなせない家事を週末にまとめて片付けていた。 十八時過ぎに会社へ到着し、今日は早いなと思う。定時という概念は早々に捨てている。 「ただいま戻りましたぁ」 事務所には五十川さんしかいなかった。 「おかえりー」 「根津さんは印刷所ですか?」 「いや、帰ったよ。孫が来るって」 「えー!まあ…今日はどうせ印刷は無理だもんな」 「宮本さんとこのチラシ?」 「はい」 「他に急ぎもないし、月曜で間に合うだろ」 「ですねー」 手帳の月曜の欄に「データ→根津さん」と書き込む。それからパソコンに向かい、メールの返信が必要な案件がないことを確認した。 …帰れる! 五十川さんは原稿の修正作業を行っている。 「手伝えることはありますか?」 「ねえよ」 「…今日、宮本さんからビアガーデン誘われました」 「へえ」 「ああいう時ってどう言うのが正解なんでしょうね」 「さあな」 「五十川さんはどう答えてるんですか?」 「…誘われねえし。つか、俺なんかに聞くより弥田のほうがそういうの得意だろ、」
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