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誘われない、ということになぜかほっとしている自分がいる。
「終わったんなら遠慮なく帰っていいぞ」
仕事終わりでメシ行きませんかと誘いたい。誘いたいが、プライベートに立ち入ることで以前のような警戒心を持たれるのが怖い。
そうして俺は、何度目になるのか出かけた言葉を飲み込み、「お先に失礼します」と肩を落とした。
事務所を出ると、辺りはようやく暗くなりはじめていた。自動販売機の明かりが目にとまり、その中にいつも五十川さんのデスクに置かれている缶を見つける。
…これくらいなら、平気かな。
冬場を過ぎても「あったか~い」缶が買えるのは、五十川さんが飲むからだ。
「事務所にポット置いてるし自分で入れればいいのにねえ」と揶揄しながら奈美枝さんが教えてくれた。「あったか~い」を一年中買えるよう業者に頼んでいるのだという。
俺は見慣れたカフェオレの缶を手に事務所へ引き返した。
「五十川さーん」
「あ゛?」
「自販機で押し間違えてしまって、いつもコレ飲んでますよね」
「ああ、うん」
「貰ってください」
デスクに置くと、五十川さんは「どうせボサッとしてたんだろ」と言って財布を出そうとする。
「お金はいいです!ボサッとしてた俺が悪いんで!じゃあ、お疲れさまですっ」
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