6. 名前

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とりあえず会話は成立している。隣を歩くことも拒否されない。ひとまず俺は安心した。 前髪のおりた五十川さんは、二日酔いの朝以来だ。 あの朝から二ヶ月。どうにか信用は回復したらしい、と思っていたのに。 「なんて名前ですか?」 犬の名前を尋ねると、とたんに五十川さんに無視された。 …なにかまずかったかな。五十川さんのファーストネームを聞いていると勘違いされたとか?!いやでも、それはもう知っているし。 「い、犬の名前ですよ?」 「…わかってるよ、」 …言いにくい名前なのだろうか。 どうフォローをしようかと考えていると、つぶやくように「ソーシ」と五十川さんが言った。 …聞き違い? 「ソーシ、ですか?」 「そうだよ!」 「それって…五十川さんの名前じゃ…」 「っ一緒なんだよ、悪いか」 不機嫌そうに声を荒げこちらを睨むのが、ただの照れ隠しに思える。 「最高のネーミングセンスです!」 「笑いをこらえて言うな。嫌味なヤツだな」 「いや、笑って…ないです」 五十川さんが照れていると思うと楽しくて仕方ない。 「笑いたきゃ笑え」 澄ました横顔に俺の頬は緩みっぱなしだ。 「くふふ…ふふ…誰がつけたんですか?」
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