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とりあえず会話は成立している。隣を歩くことも拒否されない。ひとまず俺は安心した。
前髪のおりた五十川さんは、二日酔いの朝以来だ。
あの朝から二ヶ月。どうにか信用は回復したらしい、と思っていたのに。
「なんて名前ですか?」
犬の名前を尋ねると、とたんに五十川さんに無視された。
…なにかまずかったかな。五十川さんのファーストネームを聞いていると勘違いされたとか?!いやでも、それはもう知っているし。
「い、犬の名前ですよ?」
「…わかってるよ、」
…言いにくい名前なのだろうか。
どうフォローをしようかと考えていると、つぶやくように「ソーシ」と五十川さんが言った。
…聞き違い?
「ソーシ、ですか?」
「そうだよ!」
「それって…五十川さんの名前じゃ…」
「っ一緒なんだよ、悪いか」
不機嫌そうに声を荒げこちらを睨むのが、ただの照れ隠しに思える。
「最高のネーミングセンスです!」
「笑いをこらえて言うな。嫌味なヤツだな」
「いや、笑って…ないです」
五十川さんが照れていると思うと楽しくて仕方ない。
「笑いたきゃ笑え」
澄ました横顔に俺の頬は緩みっぱなしだ。
「くふふ…ふふ…誰がつけたんですか?」
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