6. 名前

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「…母親。俺が実家を出てから飼い始めたんだ」 「五十川さんの代わりなんですねぇ…ふふっ」 「名前を考えるのが面倒だっただけだろ。ニヤつくな、気持ち悪い」 「スミマセン…よくここで散歩させてるんですか?」 「時々。実家に帰ると押し付けられんだ」 「俺も学生時代からのジョギングコースなんです。もしかしたらすれ違ってたかもしれませんね、」 人間の話を聞いているのかいないのか、犬のソーシが「ワフッ」と返事をした。 「おっ、会ったことあるって?賢いな、ソーシは」 「お前…面白がってるだろ」 「はい!」 「…ハァ、言うんじゃなかった」 「良い意味で、面白いです!」 公然と総士(そうし)という下の名前を呼べることに浮かれている自分がいる。 「面白いに良いも悪いもあるか!つか、ジョギング中じゃないのかよ。いつまでついてくる気だ」 もう少しこうしていたいのが本音だが、長居するとまた溝ができてしまうかもしれない。 「それじゃあ月曜日に」 「おー」 「ソーシも、またな!」 「さっさと行け」 五十川さんとの距離が縮まった気がして単純に嬉しい。 きっと、もっと仲良くなれる。そしていつか、笑った顔も見てみたい。 …
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