7. 紛失

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「地ビールいいですね」 「運営側は飲めないのがつらいです、」 納品書に印鑑をもらい控えを渡すと、「よかったら来てくださいね」と刷ったばかりのチラシを一枚もらった。 「ありがとうございます、毎度」 校正などで何度も目にしたから、日付も開始時刻も十分知っている。市の花火大会に合わせて、地ビールと地元のB級グルメを楽しもうという企画だった。 …楽しそうだよな、実際。五十川さんを誘ってみようかな。 帰りの車の中で、どう誘えばオーケーをもらえるか想像してみたが、結局、会社に着くまで考えても承諾をくれるイメージはできなかった。 …嫌だ、って言うのなら簡単に想像できるのにな。 車から降りて印刷所に顔を出す。根津さんに「戻りました!」と声をかけると、「あいよー」と手を上げて応えてくれた。 今日の仕事をどこでキリをつけようかと考えながら事務所へ向かう。 …名刺のオーダーも来てたっけ。メールだけ返して作業は明日かな。 ぼんやりしていたつもりはないのだが、出入り口のドアのところで五十川さんとぶつかった。 「わっ」 「すまん」と言った表情は強張っていて、俺のシャツを掴んだ指が微かに震えている。
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