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俺はどうにか内心を落ち着けてベティを探すことに集中した。
「電話を受けて、そのまま印刷所に向かった。だからベティはデスクに置きっ放しだった」
「急いでた勢いで転がしたとか?」
デスク周りのフロアを探すがクマのぬいぐるみは落ちていない。
「無意識でベティを持って根津さんのところへ行ったとか?」
印刷所へ行き、根津さんにも聞いてみたが「ベティ?知らねえなぁ」とあっさり言われてしまった。
三十分ほど社内を探したがどこにも見当たらない。
「…もう、いいよ。悪かったな仕事まだ残ってるんだろ」
「でも…大丈夫ですか?」
「大丈夫。俺、帰るな」
全然、大丈夫そうじゃない。
…ベティはどこへ行ったのだろう。本当に泥棒が?クマのぬいぐるみを?
五十川さんはふらふらと事務所を出て行った。
もう笑えない。心配だが、引き止めたとしても俺にはどうすることもできない。
もやもやとしながら仕事を片付けるしかなかった。
*
その日の夜、日付も変わろうとする時間に会社用の携帯電話が鳴った。着信は社長からだった。
「弥田、起きてたか?」
「ふぁい。どうにか」
「悪いが…頼まれてくれないか」
「なんです?」
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