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五十川さんはベティで充電でもするかようにしばらく動かなかった。
どう声をかけていいのかわからず、丸まった背中をじっと見つめる。
なんだか妙に緊張している。
「…ありがとな」
上目遣いにどきりとした。
「い、いえ」
「馬場に押し付けられたんだろ」
「社長は娘さんが寝てるから動けなかったみたいで…電話、かけたんですよ?社長も、俺も」
「あー、携帯。鞄の中に入れっぱなしだ」
よろりと立ち上がり、「なんか飲んでいくか?」と聞かれる。
「いえ、遅いし…帰りますね」
「そっか。助かったよ」
静かな微笑みだった。寂しそうで、思わず手が伸びた。一体、どこに触れようとしたのか。
我にかえって、伸ばしてしまった手のひらでベティを撫でる。
「はじめてベティ触ったんですけど、ふわふわですね!」
「…情けないよな、こんなぬいぐるみがないと駄目とか」
「そんなこと!ないです!!」
「うるせえよ」
「スミマセン…でも、本当に…上手く言えないんですけど」
…ああ、どうしよう。これって、なんだか。
「悪い悪い、気にすんな。気を付けて帰れよ」
「はい…また、明日」
「おう、おやすみ」
「おやすみなさい」
胸が苦しい。閉じていくドアに後悔しかない。
…あぁあ!俺のバカ!せっかく誘ってもらったのをなんで断ってるんだよ!
…
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