8. 困惑

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五十川さんのことが、気になる。 そりゃ、クマのぬいぐるみと営業に行く姿が気にならないわけないし、どうやったら仲良くなれるのかと入社してから気にし続けてきたわけだけれど。 けど…なんというか、「気になる」の意味合いが違ってきたというか。ただ、どう違ってきたのかを突き詰めて考えることはできない。 踏み込んではいけない領域だと、思考にストップをかけている自分がいる。 先に進めることのできない気持ちなのに頭から離れてくれなくて、その日はなかなか寝付けなかった。 短い眠りですぐ朝を迎え、悶々としたまま出社した。 どんな振る舞いをすればいいのかと思い悩む俺に対し、「おはよう、」と五十川さんはいつも通りに声をかけてくる。 「昨日はサンキューな」 相変わらずの澄ました表情なのに、特別なことなどないのに、どうしてこんなにドキドキするのか。 一瞬たじろいだ隙に、「五十川!昨日はすまん!」と社長の声がして五十川さんの視線は逸れてしまった。 「…娘の持ち物くらい把握しとけよ」 「そう怒るな。ちゃんと弥田が届けたんだろう」 「業務外でパシリにしてんなよ、パワハラで訴えられても知らねえぞ」 「弥田はそんなことしねえよ、な!」 「は、はい」
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