8. 困惑

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「ったく」と五十川さんは眉間にしわを寄せ、社長は得意そうに笑った。 五十川さんと社長の関係は謎だ。従業員と経営者という以上の信頼関係があるようで、俺としては羨ましい。 …そうなんだ!俺が目指していたのはまさに二人のような関係性だ! 心の内で握り拳を突き上げる。 俺は五十川さんから信頼されたいだけなのだ。別にドキドキしたいわけじゃない。 「…おい、弥田?」 「へ?あ、はい!」 いつの間にか社長の姿は消えていて、五十川さんが俺を見ている。 「貸しがあるの嫌だからさ。飯、奢るよ。食いたいもんあるか?」 ドキドキしたいわけじゃない。はずなのに。 「なんっでもいいです!」 「安い定食屋の昼飯にするぞ?」 「五十川さんの行きつけですか?」 「まぁな」 「そこにしましょう!」 …ランチを一緒に食べられる日が来るなんて! 「わかった。じゃあ昼前には戻る」 外回りへ出かける五十川さんを、「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出した。 見た目だけでは分からないけれど、なんとなく昨日までとは違う気がする…のは、ただの俺の願望だろうか。 遅れて出社してきた奈美枝さんに、「顔がだらし無い」と注意されるまで俺は無自覚ににやついていた。
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