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「ったく」と五十川さんは眉間にしわを寄せ、社長は得意そうに笑った。
五十川さんと社長の関係は謎だ。従業員と経営者という以上の信頼関係があるようで、俺としては羨ましい。
…そうなんだ!俺が目指していたのはまさに二人のような関係性だ!
心の内で握り拳を突き上げる。
俺は五十川さんから信頼されたいだけなのだ。別にドキドキしたいわけじゃない。
「…おい、弥田?」
「へ?あ、はい!」
いつの間にか社長の姿は消えていて、五十川さんが俺を見ている。
「貸しがあるの嫌だからさ。飯、奢るよ。食いたいもんあるか?」
ドキドキしたいわけじゃない。はずなのに。
「なんっでもいいです!」
「安い定食屋の昼飯にするぞ?」
「五十川さんの行きつけですか?」
「まぁな」
「そこにしましょう!」
…ランチを一緒に食べられる日が来るなんて!
「わかった。じゃあ昼前には戻る」
外回りへ出かける五十川さんを、「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出した。
見た目だけでは分からないけれど、なんとなく昨日までとは違う気がする…のは、ただの俺の願望だろうか。
遅れて出社してきた奈美枝さんに、「顔がだらし無い」と注意されるまで俺は無自覚ににやついていた。
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