400人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
「俺たちも上がろうと思ってるんですけど」
「いいよいいよ、お疲れ。新人くんもベティもお疲れ」
根津さんはそれだけ言うと電話に出たらしい社長と会話をはじめた。
…ベティが認識されてる!俺だけが気付いてるんじゃないんだな。
「さっきから変な顔してどうした?」
「ベティって、なんですか」
分かりやすい説明が欲しかった。
「クマのぬいぐるみだ」
…違う!そうじゃない!もっと明確な答えが欲しいのだ。
「ぬいぐるみなのはわかってます!」
「弥田?」
「ベティの存在理由が知りたいんですっ」
五十川さんは中指で眼鏡のブリッジを上げ、ベティを見つめてから口を開いた。
「じゃあ聞くが、お前の存在理由はなんだ?」
「え?」
…俺の、存在理由?どうして、ここにいるのか?
「答えられんだろう、」
思考がブラックホールに吸い込まれていく。話の方向性が違ってきている。
「ベティはベティだ」
「いや、あの…ベティは五十川さんの私物なんですか?」
「そうだけど?」
…私物。
一瞬、宇宙空間に投げ出されたかと思った。それくらいの衝撃だった。
「取引先の方もご存知なんですね」
「いつも連れて行くからな」
…真顔で言っちゃうんですね。
…
最初のコメントを投稿しよう!