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「帰られる可能性は殆ど無いと思って下さい。
同じシチュエーションで帰られる方法はほぼ0です。
取り敢えずは此処の二部屋を貸しますので、戻られる日までこの世界を満喫しては如何でしょう?」
琉歌は微笑んだ。
琉歌の言葉に希望を殆ど打ち砕かれたが、“ほぼ0”というのは、帰られる可能性が全くないわけではない。
いつかそのチャンスが来ると言う事を、琉歌は暗示していた。
その日までを今か今かと神経を尖らせて待っているより、この別世界で色んな事を体験して気を紛らわせながら待っている方が精神環境上、良いだろう。
そう言う琉歌の配慮だった。
部屋も無償で貸してくれるというので、住む分には全く問題はない。
自分たちを助けてくれたのがいい人で良かった、と、一同は胸を撫で下ろした。
まぁ、思考は大分外道なようではあるが……。
それでも、こんな何も解らない世界に投げ出されては、どうすればいいかも解らなかったであろう。
そこは、この少女に感謝しなければならない。
「ありがとうね、感謝するわ。
それと、貴女の名前を教えてくれる?
これから一緒に生活するのに、名前も知らなかったらおかしいでしょう?」
そこまで言われて、琉歌は自分がまだ、名前を言ってなかったことに気付く。
琉歌は「あっ!」と声を上げて、直ぐさま、自己紹介した。
「安藤琉歌です。
あの、今日からよろしくお願いします!」
頭を下げると、笑い声が聞こえた。
それは、ひとつ、ふたつ・・・・・・と増えていく。
琉歌が顔を上げると、健瑚とリオン、そしてフードの人物――ツカサ以外の人達が笑っていた。
「それ、俺らが言う言葉じゃん。
お前が言ってどうするんだよ」
「君、面白いね」
マオとツカサがそれぞれ言った。
それにつられて、琉歌も笑う。
「ふはっ、確かにおかしかったかな、今のは」
こうして、琉歌と夢渡りしてきた死宣告者達と、奇妙なルームシェアが始まったのでした。
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