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薄暗い、最低限の灯りがうっすらと照らす城の中で複数人の走り回る足音が響いている。
『ふむ、どうやらここにまで来たようだな。
幹部達は……魔力を感じないな。殺されてしまったか……
悲しいことだ……』
城の最奥にある城主の間で、ひときわ立派な玉座に座っている青年が瞳を伏せる。
『イヴァン、モルツ、ステン、皆良い奴らだったんだが…奴等には関係ない話なのだな……』
その時、青年の前の扉が音を立てて開いた。
「はぁっ!はぁっ!…お前が魔王か!!?」
「思ったより若いじゃねぇか!魔王!覚悟しろ!」
部屋に飛び込んで来たのは2人の男と3人の女の合計5人で、男2人と女の1人が人族。女のうち2人がエルフのようだ。
『なんだ、エルフも混じっていたのか。エルフ達とは交流もあるというのに、我等魔族も嫌われたものよな。』
青年は、ふぅっと小さく溜息をはく。
「そんなことはどうでも良い!お前が魔王か!!」
恐らくはリーダーであり、その者こそがかの『勇者』なのであろう、その者が叫んで来たので、我はゆっくりと玉座から立ち上がる。
立ち上がりながら、身体の奥底の魔力庫に眠らせていた大量の魔力を解放する。
ついでのように、辺りの空気中に存在している魔力まで取り込み、圧倒的な威圧をかける。
『我が何者かと問うたな。我が大魔王コバルト=ハイザーである。』
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