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水面に反射した光。絵でもその光は衰えていなかった。僕はその絵を穴が空くほど見つめていた。
「その絵娘が目が見えてたときに描いた作品なんだ。遺影はまだ置きたくなくてね」
僕の後ろから遺族の父が声をかけた。
その声にもうまく反応できなかった。涙を拭くことで精一杯だった。
好きな景色を見ることができない。その状況で僕は何をするだろう。彼女は景色を見るために何をしただろう。
涙で視界が滲む絵画の水面は輝きを遥かに増していた。隣で輝いたあの子のように。
そして僕の鼻はお焼香の匂いで、血生臭さを忘れた。
完
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