13. 温かい手

30/40
661人が本棚に入れています
本棚に追加
/417ページ
カバンを持って営業部のフロアを出た。 会社の人達を多少警戒しながらエレベーターに乗って1階に下りて会社を出る。 人間不審に陥ってるのは、今は仕方ない。 でもそれより、高瀬先輩と一緒にいることを見られることが恥ずかしいし、ウワサがたつのもいやだし…。 カフェ前でスマホを触っている高瀬先輩を見つけて、さらに心拍数が上がった。 えーっと…どうやって声をかけたらいいかな。 てか、どうやって歩いて、どう息をして、声を出すんだっけ。 なんて考えてるうちにどんどん姿は大きくなる。 あと10mくらい…7m…5m……。 「おっ、お待たしぇっ…お待たせしました」 パッと顔を上げた高瀬先輩は吹き出すように笑う。 「お待たしぇって」 「間違えました」 全然笑い止んでくれないことに、ますます恥ずかしくなってくる。 あー、もう、なんで大事な時はいつもこうなるんだろ…。
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!