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「上田先輩…」
かける言葉が見つからず、名前を呼ぶことしかできなかった。
上田先輩は私にまっすぐな視線を向けて、微笑んだ。
「大丈夫、俺まだ仕事やめないから」
「はい…」
「気付いたらいつの間にか社会の歯車になっちゃったなぁ、と思って…何で働いてるのかとか考えちゃうんだよ、こんな俺でも」
上田先輩でも…?
仕事こなして、後輩思いでアドバイスくれて、会社に必要とされている人でも、何年働いてもそう思う瞬間があるんだ…。
「でも、俺は今をがんばるよ?異動しても、挫折しても、忙しくても…置かれた場所で咲くよ俺は」
「…ポジティブですね」
「それが俺の取り柄だからね」
今日一番の笑みを見せた先輩は、夜景よりも輝いてみえた。
でもそのまま街の中に消えて見えなくなってしまいそうなくらい儚くも思えた。
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