4. 上司と後輩

29/32
前へ
/417ページ
次へ
頂上まであと少し、という時に上田先輩が口を開いた。 「こうやってさ、街を見てるとなんか切なくならない?」 「…ど、どうしたんですか?」 「一生懸命働いて、お金稼いで、自分は何が楽しいのかなぁ、って」 今日の先輩は、やたら感傷的だ。 これが5月病? もしくは休日で仕事から離れている影響? 「でもね、嶋岡ちゃんや浅井とか一生懸命働いてくれる新入社員が来てさ、俺もがんばろうって思えたんだ」 私の顔を見て上田先輩が微笑んだ。 「今日は俺からのお礼も兼ねてるんだ」 「そんな…私何にもしてないですよ?」 「んー、いてくれるだけでもいいかな、ありがとね」 「いえ、私こそいつもありがとうございます」 「またご飯食べに行ったりしようね」 「はい」 そこで、お互いの連絡先を知らない事に気付いて交換した。 観覧車は半分を折り返したところだった。
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!

669人が本棚に入れています
本棚に追加