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頂上まであと少し、という時に上田先輩が口を開いた。
「こうやってさ、街を見てるとなんか切なくならない?」
「…ど、どうしたんですか?」
「一生懸命働いて、お金稼いで、自分は何が楽しいのかなぁ、って」
今日の先輩は、やたら感傷的だ。
これが5月病?
もしくは休日で仕事から離れている影響?
「でもね、嶋岡ちゃんや浅井とか一生懸命働いてくれる新入社員が来てさ、俺もがんばろうって思えたんだ」
私の顔を見て上田先輩が微笑んだ。
「今日は俺からのお礼も兼ねてるんだ」
「そんな…私何にもしてないですよ?」
「んー、いてくれるだけでもいいかな、ありがとね」
「いえ、私こそいつもありがとうございます」
「またご飯食べに行ったりしようね」
「はい」
そこで、お互いの連絡先を知らない事に気付いて交換した。
観覧車は半分を折り返したところだった。
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