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ガチャッ。
前の扉が不意に開いて、驚いて顔を上げた。
扉の向こうには、明らかに私と同じように驚いて静止している男の人。
…この人…誰だっけ…。
「…あ、えっ」
先に動いて口を開いたのは向こうだった。
「あー、ごめん、こんな時間に誰かいるとは…」
相手が困惑した様子を見て、自分の目からとめどなく流れる涙に気づいて背を向けた。
「…すいません、私、資料置きに来ただけなんで」
涙を拭い、相手の横を抜けて会議室を出た。
まだ音のするコピー室の前を足早に通り過ぎ、角を曲がってトイレにかけこむ。
感応式の電気が点いて、鏡に目を赤くした私が映る。
「…ブサイク」
水で2、3回顔を洗った。
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