食べかけの林檎に齧り付く

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 残暑の気配も薄くなり、少し肌寒くなってきた秋の夕暮れ時。  僕は慣れた手つきで林檎の皮を剥いた。  日曜日も、両親の帰りは遅い。  代わりに、家には友人__という表現は不適切かもしれない__が遊びに来ていた。  勉強する、と朝から意気込んでやってきた彼だったが、疲れてしまったのか、お昼過ぎからソファの上で寝息をたてている。  全く起きる気配もなく、かといって起こすのもなんだか忍びない。そんなことを考えていたら小腹が空いて、林檎を食べようと思いつき、今に至る。  我ながら綺麗に切り分けた林檎を皿に乗せ、リビングへ向かうと、彼はまだ熟睡中だった。  起こさないようにそっとテーブルに皿を置く。コトン、とわずかな音がした。  フローリングに直座りし、林檎をゆっくりと口に運ぶ。  一口齧れば、サクッと小気味良い音がして、甘くて爽やかな味が口の中に広がる。  __うーん、まだちょっとすっぱかったな。  まぁおいしいことには変わりないや。そう考えながら咀嚼していると、  __プルルルルル……  電話が鳴った。  __まだ半分しか食べてないのに。  不満に思いながら、電話を取りにいった。きっと両親のどちらかだろう。  __今日も10時過ぎとかに帰って来るのかな……  ぼんやりとそう考えて、受話器を手に取った。
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