ホンモノとニセモノ

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もう何百年も昔、愚かな人類は核戦争を起こし人口は半分になった。その結果地球は一時期地上で暮らせないほど荒廃した。が、そのお陰で科学は進歩し、今では昔より遥かに良い状態に。なんて滑稽な話になのでしょう。 そうしてやっと学んだらしい人類は何をしても地球に被害のないバーチャル世界で生きる事になった。科学により、寿命さえもなくなったこの世界。法律で80年分ほど生きたら死んでもいい事になっている。 そしてバーチャル世界ではなんでも出来る。人を人工的に作り出すことも可能だ。その中で神のような存在になることも。なので誰がホンモノでどれがニセモノなのかわかぬまま生活している。まあ今ではそれが常識で気に留めている人などほぼいないが。 私はそんななにもかもが揃った生活が嫌だった。そこでまだ何もわからない、ここまで科学が進歩していない時代を作り出し見学することにした。 どの時代の人達も未来なんてわからぬまま、遅れた知識で私利私欲を満たそうと足掻いていた。それはとても醜いが同時に私達が持っていないものであり、羨ましく美しいものでもあった。 が、やはり人類は醜く滑稽な生き物である。欲を求めすぎる生き物は地球を汚す。だから人類などいらないのだ。ただ、いきなり人類を全て消すのもつまらない。何より罪をわかっていない者を消しても無駄なだけだ。ならばまずは私が消えよう。もうとっくに80年分など過ぎてるはずだ。さらば、美しき地球。愚かな人類が全て消えるまで、どうかその姿であり続けて。 ***** 「no.374、死を選びました」 「何故だ。何故私達の存在に気づけない。何故自分がニセモノだと気づけない。どいつもこいつも馬鹿ばかりだ。何度でもやり直せ。我らを導く神が生まれるまで」 そんな彼らもバーチャル世界の住人である。
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