第1章

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僕が高校生の時、バブル経済で日本中が沸き返っていた頃就職した叔父が、自分の経験を語ってくれた。 給料は今では信じられないくらい良かったが、残業残業で疲れ果て、朝出勤したとき会社のある新宿で降りずに電車に乗り続け、昼頃お得意様の所に向かおうとした会社の先輩に発見されるまで、山手線を何周も周回した事があったという話しである。 残業続きで心身共に疲労が蓄積していたある朝、地下鉄に乗っていた僕は電車の中で居眠りをしてしまい、会社のある駅で降り損ねてしまった。 焦った僕は次の駅で降り、向かいのホームに行くため階段を駆け上がり、行く先が書かれた看板を見ずに別な階段を駆け下り、止まっていた電車に駆け込む。 次の駅、え!?それ何処? 行き先を間違えたようだ。 次の駅で降り向かい側に止まっていた電車に駆け込む。 出勤時間を過ぎた頃上司から電話がかかってきた。 「遅刻か!?ちゃんと連絡を寄越せ!」 「す、すいません。 居眠りしてしまい降り損ねてしまったのです」 「だったら戻ってくれば良いだろうが」 「そ、それが…………」 「どうした!」 「自分が今何処にいるか分からないのです」 「……………………」
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