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連休明けの朝だった。痴漢だか急病人が出たとかでダイヤは始発から乱れてて、ホームにはイライラした空気が蔓延していた。
俺はたまたま出張がキャンセルになったんで、会社に引き返そうとしてたんだ。
そしたら小町ちゃんがいつも通り、車両に乗り渋っているのが見えた。
ホームに来てるのはさっきまでの超満員な混雑具合が嘘みたい空いてる電車でさ、乗っちゃえば楽なのに一歩も足を動かそうとしないんだ。
ま、ストーカーと居合わせた時の恐怖を思えば当然っちゃ当然か。
警告のベルが鳴る。
「〝危険ですから、おさがりくださーい〟」
エレベーターとかと違って、電車のドアって問答無用で閉まるんだよな。駅員さんが気づいて開けてくれないと、マジで痛い思いする。
俺は一瞬嫌な想像をして、小町ちゃんの方に向かったんだ。このまま歩いて行けば、後ろから肩をポンと叩けるって距離だった。
幸いにも小町ちゃんは、体重をホーム側に寄せた。
君子危うきに近寄らずって言葉を知ってたのかもしれないな。
俺の口からは自然と安堵のため息が出たよ。
そしたらさ。
あいつが俺と小町ちゃんの間に立ったんだよ。
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