34人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
一見すると、あからさまな迷惑メール。
だが今の未奈にとっては、最高の助け舟だった。
自分で息子を殺せば、どんな理由があっても刑務所に入れられる。
残された娘も、犯罪者の家族として周囲から白い目で見られてしまう。
だからといって、現状を放置する訳にもいかない。
娘の為にも…。
息子の命を、ここで絶たなければいけない!
そう強く決心をした未奈は、ショートメールの番号に電話をした。
――――――――――
「――であるからして、これは――」
大学の講義に出席していた涼花は、大きく欠伸をして伸びをした。
興味の無い話を聞くのは、本当に暇だ…。
大学生という設定上、最低限の講義はでないといけない。
しかし、涼花にとって講義などどうでもいい事だ。
最悪単位を取れずに留年を繰り返しても、金を工面する為にしょうがないと適当な言い訳をしておけばいいのだ。
「……ん?」
後ろの方の席で講義を聞き流していた涼花の携帯が振動する。
ブルーバードから対象を決めてショートメールを送ったという連絡は受けていたので、近い内に電話は来ると分かっていた。
「………」
静かに席を立つ。
教室の外へ出ようとした時、隣に座る1人の女から服を掴まれた。
「ちょっと涼花!
あんたマジで単位ヤバいんだから、最後までいなよ!」
開いた右手を口の右側に当て、小声で言う。
――彼女の名は、吉田華恋(よしだかれん)。
茶髪にウェーブを掛けた髪型で、美人というよりも可愛い方の顔立ちをしている。
見た目通りに男性経験も多く、今付き合っている彼氏は16人目らしい。
「ちょっと急用!
講義どころじゃなくなっちゃった!」
「はぁ!?
今のあんたに単位取るより大事な事ある訳!?」
涼花にとっては、単位こそどうでもいい。
依頼者となる予定の者から連絡が来た以上、最優先すべきはそっちである。
最初のコメントを投稿しよう!